1/5〜7 錫杖岳へ行ってきました。

錫杖岳は北アルプスにある標高2168mの山。槍ヶ岳や穂高、笠ヶ岳といった周辺の名山に比べると標高が低いうえに一般登山道が無いことから、知名度はそれほど高くはないのですが、城砦のような岩壁が聳え立つクライマーにとっては楽園のような山なのです。

無雪期は入門的なルートからエキスパート向けのルートまで様々あり、多くのクライマーで賑わう山だが、冬は壁に氷が張り付き雪に覆われることからすこしハードルが上がり、夏季の入門ルートでも困難さは段違いになります。しかしそういった恩恵により、アルパインクライマーにとっては大変魅力的なクライミングが楽しめるのです。 

アプローチは新穂高の槍見温泉から登山道を辿る。ここは沢筋なので、積雪が多いとラッセルが非常に大変になります。しっかりしたトレースがあれば、藪が雪で埋まってしまうので、夏季よりむしろ楽かもしれない。今回は積雪が少なく、駐車場〜取り付きまで3〜4時間くらい。比較的短いアプローチで内容の濃いクライミングが満喫できます。

左がメインエリアの前衛フェイス、右はP4といわれる岩壁です。山頂はここからは見えず、さらに奥に位置する本峰フェイスを越える。ここからの景色には何度訪れても心を奪われる。

ルートの取り付きへはP4側から上がり、前衛壁を向かって左へトラバースするようにして進む。そのほうがラッセルの労力と雪崩の危険性が少ない。夏に使われる錫杖沢の沢筋の道は雪崩の危険があるため、あまり使われないようだ。

以下、今回登ったルート↓↓↓

□P4チムニールート

錫杖の各ルートのなかでは比較的取付きやすいが、やはりそれなりに難しい。3ピッチほどと短めなので冬の錫杖デビューにはよいかもしれない。雪に埋まっていない早い時期であれば氷と岩のミックスクライミングがとても楽しい。

□左方カンテ

夏の入門ルートは冬でも人気。しかし内容は様変わりする。傾斜の強いフェイスをドライツーリングで突破したり、チムニー内にはベルグラがびっしり張り付いてアイスクライミングになったり、多彩な内容で冬季登攀のエッセンスが実感できる。何度でも訪れたくなる好ルート。

□1ルンゼ左

下部はドライツーリングが中心となる。全体的に傾斜が強く、この手のクライミングに慣れてないと難しいだろう。上部は氷のルートの1ルンゼと合流する。合流後は完全なアイスクライミングとなる。

□P4ダイレクトルンゼ

あまり人気はなさそうだが、内容の詰まった好ルート。間違いなくもっと登られても良いルート。

クライミングの難易度は高めだが、アプローチも近く、プロテクションも安定して確保できるルートが多いので、純粋に困難なミックスクライミングに集中できる。錫杖岳は素晴らしいところです。東京からは4時間ほどと少し遠いのが難点ですが...。

冬季登攀は決して気軽にはじめられるスポーツではないですが、困難を乗り越えた先には素晴らしい充実感が味わえるでしょう。